ばなな通信

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# 「リテイク・シックスティーン」
評価:
豊島 ミホ
幻冬舎
¥ 1,680
(2009-11)

個人的に大好きな作家さん、豊島ミホさんの最新作ということで、うきうきしながら購入。
現在は読了していますが、やっぱりこの人好きだなあ、と思うのです。

豊島ミホさんの作品は、小学生から高校生くらいまでの女の子が主人公となることが多いです。秋田県出身だということもあり、東北地方の風景描写も非常に多く、なんとなく懐かしい気分になることも。って、私自身はほとんど関東住まいなのですが。
この「リテイク・シックスティーン」もやはり高校1年生の女の子が主人公なのですが、設定が今までと少し変わっている感じでした。

というのも、主人公の沙織の親友・孝子が、とんでもない告白をするところから始まる。

「私、未来からきたの」

27歳だったのだけれど、人生をやり直したくて、高校入学からやり直すために過去へやってきたのだ、と。
そこでタイトルの「リテイク・シックスティーン」の意味がわかるのですが、設定がちょっと変わっているというこの部分を除くと、あとは本当にごく普通の高校生活なのです。
美人で頭のいい沙織が抱えている、でも人にはあまり軽々しく言えるわけではない悩み。
人をうらやんでばかりの孝子。彼女の場合、27歳の時に何かを捨ててしまっているということがわかるのですが、そこははっきりとは描かれず、ぼんやりと示唆される程度――でもだからこそ感じる、自分、というものへ対する嫌悪感。
この二人の女の子と仲良しで、いつも一緒に行動している男の子二人も出てきます。
大海くん、というお調子者で、しかし過去に苦労も経験しているという男の子。
そして、すでに決められたレールがあり、そのために勉強を続けている村山くん。
それぞれのキャラクターに個性と抱えている問題があり、でもそれはおそらく人から見れば「些細なこと」であり、普通に生活できているんだからいいじゃない、と思われてしまうようなことでもあり――でも本人にしてみれば自分の人生すら左右するような一大事。

要するに、本当にどこにでもいるような、ごく普通の高校生を描いたお話なんです。物語なので少しヘビーな設定にはなっていますが、でもやっぱりごく普通の高校生なんです。
しかし、豊島ミホさんのすごさって、この「ごく普通の高校生」をイキイキと描くところだと思うんです。
あらすじだけ言ったら、きっと「ふーん」と思われてしまうような気がします。でも、実際に読んでみると、「あ、この閉塞感、知ってる」と感じると思う。そういう作家さんなんです。

たぶん、どんな高校生活を送ってきたかによっても評価って変わってくると思うんですが、私の場合、今回主人公の沙織が抱えていた感情に近いものを、過去に感じていたことがあったし、正直今も感じています。
それが、ものすごい閉塞感につながっていく。
そんな中で、私の場合、高校生活をあまり楽しまない、という感じで乗り切ってきました(笑)基本は生活よりも勉強。勉強をすることでいろいろ知ることも出来たし、意外とこれをきっかけにしていろんな交流もできたんですよね。勉強教えてくれと言ったり、言われたり。
同級生であったり、彼氏であったり、先輩であったり、後輩であったり。
あんまり先生には質問に行かなかったなあ、と思うんですが、物理とか地学とか、先生に質問に行けばよかったな、と最近は思ってます。なんか、それだけで自分の力にもなっただろうし、先生としても面倒くさいと思う反面、ちょっとは嬉しいと思ってもらえたんじゃないかな、とか。

なんにせよ、高校時代っていうのは、ものすごく特別な時だった気がします。私みたいに、高校生活を楽しまなかった人間だからこそ。
だから、別に特別なものが読みたいわけじゃないんです。宇宙人とか未来人とか超能力者とかが出てくるのもおもしろいけれど(「涼宮ハルヒの憂鬱」ってライトノベルの話で、私はアニメしか見てないんですが、エンタメとして普通におもしろかった。ああいうのも学園もののひとつの醍醐味だと思う)でも、なんでもない話が読んでみたい。
そんな時に豊島ミホさんのお話って、すごく中毒性があるんです。

小学生の頃の、あの特殊な感じ。仲良しの子としか遊ばなかったり、いつも仲良しじゃない子といるとちょっとよそのおうちに来たような感じになったり、学年があがるごとに仲良しの子が変わったり、どうしようもないことで感じる罪悪感だったり、喜びだったり、憤りだったり。
高校生の時の閉塞感と、開放感。なんだか自分は完璧だと思ってみたり、自分は悲劇のどん底にあると思ってみたり。
今になってみると「ああ、あの頃は馬鹿だったなあ」とか思うことを、真剣にやっていた頃。
それを、あのときの空気感そのままに描くことができるのって、すごいことだと思うのです。

豊島ミホさん、久しぶりの新刊でわくわく読んだのだけれど、やっぱりおもしろいです。
| - | - | 15:20 | category: レビュー的なもの |
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